舞踊と儀式をリサーチする旅を行った後に、巡礼することになった土地が、現在滞在しているブリンダヴァン (Vrindavan) です。
ブリンダヴァンに長期滞在している日本からの滞在者は数えるほどしかいないので、みなさん私のことを不思議に思います。
インドのクラシック音楽を本格的に学ぶ人はバラナシやカルカッタなどにより行く傾向があります。ブリンダヴァンではキールタンやバジャンという比較的歌うことが簡単な大衆的な歌をお寺で歌うことがポピュラーになっていす。クラシック音楽は、インドの人でも普通の人は歌うことができない難易度の高い音楽です。ということで、ブリンダヴァンでクラシック音楽を学んでいるということは、実際に不思議な組み合わせではあるのです。
ブリンダヴァンはインドで最もポピュラーなヒンドゥー教の神様であるクリシュナが成長した場所であり、魂の伴侶であるラーダとの愛を育んだ場所として有名です。毎日インドの国内や世界各地から巡礼者がたくさん訪れています。
初めてインドを訪れた2012年の夏、デリーからの一日のバス観光ツアーに参加したことがあります。
有名なタージ・マハルがあるアグラなどを訪れるツアーなのですが、インド国内観光客向けのツアーだったので、それ以外にも色々な聖地を巡ることになりました。
その中で、マスーラ (Mathura) とブリンダヴァン (Vrindavan) という2つの地域に訪れた時に、なんとも言えない不思議な幸福感に包まれました。これこそインド、というような深く濃い信仰のアロマがただようような感覚、路上を独り歩きする牛たち、お寺のそばに佇む人たち、流れている音楽、そのすべてが私を魅了しました。
外国人の観光客はその時みあたらず、外国人は私と、一緒にツアーに参加した友人だけでした。
彼の話では、クリシュナを信仰するインドの人々にとってマスーラとブリンダヴァンはとても重要な場所ということでした。
森の中に数百という聖地がたくさんあって、お寺もすごくたくさんあるんだよとバスの中から外を眺めながら教えてくれました。
その話を聞いて、窓の外の暗い森を眺めながら今度はこの地に長期で滞在してみたいと一人で思っていました。
それから3年ほどしたある日、色々な要素が重なり、念願のブリンダヴァンに長期滞在する夢が叶う機会が訪れました。
初めてのブリンダヴァン
南インドのゴアとゴカルナという場所をインド人の友人に勧められたので訪れた後、やっと念願のブリンダヴァンに向かいました。
飛行機に乗ってデリー空港に到着した時には、寒くてびっくりしました。インドとは、一年中暑いイメージがあったために、薄手の長袖のパーカーなどしいか持参してきていなかったのです。
空港のカフェテリアでタクシーを待つあいだじゅう、デリーの都会っぽい女性がコートを羽織っている様子を見て、しまったと思ったものです。大幅に遅れて到着したタクシーに乗り、アシュラムの方と一緒に夜のデリーの高速道路をタクシーで突き抜け、3時間離れた場所にあるブリンダヴァンに向かいます。
初めて到着したブリンダヴァンのアシュラムは、夜中に到着したということもあり、真っ暗でひっそりとしていて、猿がどたばたしていたのが印象的でした。
案内されたお部屋に着き、寒さと戦いながら慣れない電気式のヒーターでお湯を温める方式のシャワーを浴び、寒さに震えながらもヘアードライヤーで暖めてどうにか寝床に着きます。
なぜか窓のない部屋。ここはどこなんだと不安になりながらもどうにか眠りについたものです。
次の日朝早くから、隣の部屋ではインドのアコーディオンのような楽器であるハーモニアムを引く男の人の声が聞こえて少し安心しました。お昼近くまで寝てから、アシュラムのグル(師)がいるというお部屋に案内され入ります。
暖かい歓迎を受けて、イタリア人の若い男の人がハーモニアムと一緒に歌を歌い始め、みな一緒になって歌い、踊り始めました。