ブリンダ・デビ/ トゥルシー・デビ
ブリンダ・クンダは「ブリンダ・デビ」という女神様がかつては暮らしていたということで知られている泉です。
ブリンダヴァンのもう一つの呼び方はブリンダヴァナというのですが、「ヴァナ」という言葉は森を意味します。
ブリンダヴァナの森の名前はブリンダ・デビの森という意味が含まれています。
ブリンダ・デビはブリンダヴァナの森を所有していたとても信心深い王、ケデラ(Kedera)皇帝の娘として生まれました。ブリンダ・デビは王室の特権を捨てて、ブリンダヴァナの森に住み始め、クリシュナのために生を捧げ修行したと伝えられています。
ブリンダ・デビの献身的な行為を見たヴィシュヌ神は、「ここで行われたいかなる修行はすぐに成果をもたらし、優れた結果をもたらすでしょう。」と話したとされています。
そのため、ブリンダ・クンダで行われた瞑想やお祈り、チャンティングなどの行為は特別な祝福をもたらすと信じられています。
毎年カルティカの秋の祝祭の季節になると、ブリンダ・クンダは世界中からの巡礼者たちが参拝に訪れます。
ブリンダ・デビと「リーラ(クリシュナとラーダの愛の至福)」
ブリンダ・デビはクリシュナとラーダのパスタイム(pastime)と呼ばれている至福の出会いの機会をすべてアレンジした女神様です。人の恋愛でいうと、デートとなるようなイベントと同じになるでしょう。
クリシュナとラーダはお互いに結婚していないので、二人で会って愛を分かち合う機会はとても貴重になります。ラーダは特に、夫や姑からどうにか逃れては、クリシュナに会いにブリンダヴァンの森に行きます。
ラーダとクリシュナが出会うと、周囲は超越的な至福の愛で包まれます。
この歓喜と至福のエネルギーは「リーラ」と呼ばれ、ブリンダヴァンの本質をなしています。
そして、この「リーラ」アレンジしているのがブリンダ・デビなのです。
ブリンダ・デビはクリシュナとラーダが森で一緒に眠っている間、日の出前に目覚めさせ、それぞれの家の人が彼らの不在に気づく前に急いで連れて帰るという役目を担っていました。
「リーラ」を演出するために贈り物、花、装飾物、衣服、楽器、ブランコ、食べ物や飲み物などのすべてをアレンジして届けるのも彼女の役目でした。
ブリンダ・デビの右手にはいつも黄緑色のオウムがとまっています。彼女はオウムに指示して、クリシュナとラーダが会っている間、家族など危険な人物が接近することを警戒するための道を守っています。
ブリンダヴァンの森は完全にブリンダ・デビの管轄下にあるので、彼女の憐れみがなければ、観客としてでさえ、クリシュナとラーダのリーラに近づくことができないと言われています。
ブリンダ・デビがトゥルシーの木になる
ブリンダ・デビは別名でトゥルシー・デビとも呼ばれており、2つの名前の女神様は同一の神様の名前になります。
インドでは、同じ神様を呼ぶ名前が複数あることがほとんどです。
ブリンダ・デビの神への献身ぶりを見て感銘したヴィシュヌ神は、ある時、ブリンダ・デビの祝福が、すべての神への奉仕を行う献身的な人たちへ、最も吉兆をもたらす植物の形として生まれ変わるという恩恵を与えました。
ホーリー・バジル(聖なるバジル)と呼ばれているトゥルシーの木は、ブリンダ・デビの生まれ変わりなのです。ということで、トゥルシーの木は植物ではあるのですが、インドでは神様だと信じられています。
クリシュナとラーダを信仰するヒンドゥー教徒の人たちがマントラを、108回を1ラウンドとして数える修行を行うためのマーラ(数珠)のビーズはトゥルシーの木で作られています。
クリシュナを信仰するヒンドゥー教の人々は、トゥルシーのネックレスを身につけます。トゥルシーのネックレスは身につけた人を事故や悪い霊などから守り、スピリチュアルな修行を行うとその効果が数段に増強され、恐れや心配などから解放し、身につける人を浄化し、スピリチュアルな行いをするためにあらゆる面で大きくサポートして助けてくれるとされています。
トゥルシーはすべての植物や木々の女神であり、あらゆる点で縁起の良いものとして考えられています。トゥルシーの木を見ること、触ること、香りをかぐこと、祈ること、お辞儀をすること、この木のことを聞くこと、種を蒔くことだけで、常に縁起の良いことが起きるとされています。
この木を見たり触ったりするだけで、すぐにこれまでの罪を浄化し、あらゆる苦痛や病気から解放されることができると伝えられています。トゥルシーの木に従順さを注いで水を注ぐだけで、死の恐れから解放されることができるそうです。
トゥルシーは信者に無限の至福を与えると伝えられているので、インドではトゥルシーはすべての植物の中で最高の植物であり、どんなガーランド(花輪)にもクリシュナが身につけるためにはトゥルシーの葉が必要とされています。
トゥルシーのビーズの数珠でマントラを唱える人は、すぐにクリシュナと繋がることができると信じられています。
ブリンダヴァンのお寺には、必ずと言っていいほど、トゥルシーの木が植えられています。トゥルシーの木は貴重なので、猿や牛、孔雀などが食べてしまわないようにケージの中に入っています。
トゥルシーの木の周りを最低3回まわって歩くことも良いことだとされており、お寺のトゥルシーの木にはこのように回って歩く信者たちの姿がよく見かけられます。
トゥルシーの木の周りを回って歩く信者たち