「すべてがうまくいかないとき」と ペマ・チュードゥン
チベット仏教のことを世界的に広めて教えている人はたくさんいますが、私の好きな人はペマ・チュードゥンという です。
中でも、「すべてがうまくいかないとき チベット密教からのアドバイス(When Things Fall Apart)」という彼女の著書は好きな本のうちの一つです。
私はこの本を英語のオーディオ版で聞いたのですが、彼女の言葉を聞いているうちに、たくさん人生の知恵を学ぶことができました。
ペマ・チュードゥンは3回の離婚を繰り返し、チベットの僧になることを決意したそうです。
きっとこのような経験をしていなかったら、チベット仏教を勉強することはなかっただろうと話していたのが印象的です。
ペマは、人生で最悪だと感じる経験をしても、そこに実は至福(bliss)が隠されていることを教えてくれます。
彼女の言葉は、「Follow your bliss(あなたの至福についていきなさい)」というジョセフ・キャメロンという神学者の言葉を想い出させます。
至福とは、スピリチュアルな至福に勝るものはないような気がします。
ペマのレクチャーの中で、印象的なセクションがあります。
ペマの尊敬する僧侶は、過去に自分がある人と話した後で、その人がすぐ後に自殺してしまったことを知るようになったといいます。
驚いたペマはその僧侶に、その後どのようにして回復したのかと尋ねます。
するとその僧侶は、痛みはまだなくなっていないと答えます。
ただ、もうその痛みをなくそうとジタバタすることをやめて、その痛みと共に生きることを受け入れるようになったと話します。
この話を聞いた時わたしは、なぜかとてもしっくり来ました。
私達は、何か嫌なことがあったり、痛みを伴う経験をすると、痛みをなくそうとしたり、忘れようとしたり、押し込もうとしてしまいがちですが、そのすべての努力が無力な泡のように感じられる時があります。
しかし、このような時は、逆に痛みを受け入れ、どうにかでも生き続けることが大切な気がします。
次第に、その痛みが伝えようとするメッセージが聞こえてくるようになる気がします。
人生でほんとうにすべてがうまく行かなくなった時は、実は大きなチャンスが隠されている時なのかもしれません。
私のもう一人の大好きなスピリチュアル・ティーチャーであるイアンラ ヴァンザントは、船が難破して粉々になった時、そのような時は好運だと話しました。少しでも船が動くと、その船を直してどうにかまた進んでしまおうとするものです。
しかし、船が粉々になってしまった時、本当に神に助けを求めるしかなくなってしまう。そんな時に私たちはより謙虚になり、本当の自分の道を進むことができるようになる。
ボダナートのストゥーパ
ボダナートのストゥーパはネパールで最大の仏塔であり、チベットの国外では最も聖なるチベット仏教の寺院です。
ストゥーパは36Mの高さでネパールでは一番、世界では2番目に高いストゥーパだそうです。
ストゥーパとは仏教の舎利塔とも呼ばれているブッダの骨が埋められていると伝えられている塔です。
ボドナートのストゥーパは14世紀ころに建設されたとされており、建設の理由については様々な伝説が語られています。
1959年に中国がチベットを占領してから、数千のチベット人の亡命者たちがこの地に移り住むようになったといいます。
今では、この寺院はチベット仏教の最も重要な中心地の一つになりました。
2015年4月のチベット地震のときには塔にヒビが入り、修復するために塔が一度撤去され、また建て直されました。
今ではきれいに建て直され、美しい姿で君臨しています。
私がチベット仏教に初めて触れることになった時は、インドのダラムサラという場所に訪れた時でした。
チベットの国外亡命政府がある場所で、ダライ・ラマが住んでいる場所でもあります。
初めてダラムサラに着いた時、バスの故障や天候の悪化などで大幅に遅れ、到着が夜遅くなってしまいました。
閉店間際の宿のレストランで一人で食事をしているとお店で働いている若い青年が、チベットからたくさんの人がヒマラヤを歩いて国境を超える危ない道を乗り越えてここにたどり着くんだよという話をしてくれました。
まずはネパールに着き、その後、ダラムサラに来るという話を聞きました。
ヒマラヤを渡る時には、監視がいるので、あの寒いヒマラヤを夜に歩くらしいのです。
命を落とす人も、凍傷になってしまう人もいるということでした。
あまりチベットの事情を知らなかった当時、青年からのお話を聞いてショックを受けたものです。